2007年11月29日木曜日

スポーツ食育のすすめ 

人間の身体は約60兆個の細胞からできています。
その細胞は壊れては分解され新たな細胞に生まれ変わっていきます。
このことを新陳代謝と呼んでいます。

皮膚なら約28日プラス年齢、骨なら2年位、平均すると約半年程度で身体の細胞は入れ替わります。この陳代謝には栄養素が最も必要で、この半年間にどのような栄養素が採られたかによって健康度が変わってきます。

夏からの食事が悪いと、それがのちのち冬になって風をひきやすくなるということは、その一例です。

スポーツ・運動をするということは、この新陳代謝を早める事を意味します。
つまり、より早く細胞を分解してしまうきっかけになるのです。
よって、スポーツをする人はより多くの栄養素を補っていかないと、かえって身体が傷んでしまうことになってしまいます。
しかも、その変化は急に起るのではなく、数ヶ月後になって徐々にダメージとして現れることになります。

夏の合宿で激しいトレーニングをしていても、食事がしっかりとれていないと、秋の試合の頃に身体は壊れた細胞組織の修復が間に合わず、トレーニングの効果が出ないばかりか、むしろダメージや傷害として現れてくることすらあります。

特に、スポーツマンは身体を作る為に食事をとるという考え方になります。

身体を作る為の食事とは、、、基本的には炭水化物とタンパク質と脂肪です。
炭水化物はエネルギーの補給にかかせないもので、ご飯やパン、うどん等をいいますが、これらの食品は急激な血糖上昇を招きます。
この急激な上昇により血糖を下げようとしてインシュリンの分泌を誘発し低体温をきたします。
低体温は体の省エネタイプを意味する為、筋肉からの発熱が起らない状態になります。

理想的には全粒穀類(玄米等雑穀類)が望ましいです。
これらは、ゆっくりと血糖を上昇させる為精神的にもリラックスした状態になります。
玄米のミネラル含有を100とすると白米は5になってしまいます。
玄米は、脳の栄養に不可決なリン脂質やGABAも多く含んでいます。

血糖と精神面の関係は本題と少しずれるかもしれませんが、少し取り上げます。
低血糖状態だと人間の体は他の方法でなんとか血糖を上げようとします。
交感神経を緊張させて、アドレナリンを放出して内部の力で上げにかかるのです。
簡単に言えば怒りによって容易に血糖は上昇するのです。
空腹時にイライラしたりするのもこの訳で、極限に達してしまうとアドレナリンの作用で血糖が上がるため「ご飯なんていらない!」等と実際にそのレベルまで血糖は上ってしまいます。
試合前等精神を安定させ、集中力を高めるには日頃の血糖の安定化が重要です。
集中力が低下するとケガの原因にもなります。

次に、体を作る栄養素の代表はタンパク質です。
トレーニングで破壊された古い筋細胞は、身体の中でアミノ酸に分解されます。
このアミノ酸と食べ物からとるタンパク質から分解されたアミノ酸と組み合わさって新しい筋細胞ができます。特に成長期ではタンパク質が重要になります。
タンパク質を多く含む食品では魚介類、大豆、大豆製品(みそ汁、豆腐、納豆等)です。
タンパク質はエネルギー補給にもなりますが、あくまでも筋肉の修復に使われるのが主ですので、エネルギー補給目的に摂取する事は好ましくなく、運動時は十分な炭水化物=糖質を十分に採る事が大切です。

それから、エネルギー発生と身体形成維持の円滑化にはビタミンを取る事が大切です。
ビタミンは生体内で作る事ができないので常に蓄えておく事が大切です。
例えば、車のエンジンオイルのようなもので、無くなったら補給では間に合わず常に蓄えておかないと車は動きません。

ラクビー等、短時間でエネルギーを消費するスポーツの場合、効率よく栄養素をエネルギーに変えるにはビタミンが必要になります。
しかし、汗で失われるので疲れてからビタミンを採るのではスポーツをする人にとっては遅すぎます。
常に満タンにしておく事が重要です。
特にビタミンB群が必要になってきますが、玄米にもビタミンB群の含有が多く主食からビタミンが採れるので効率的と言えます。

運動強度によって、効率のよい栄養素の取り方は若干異なります。
マラソン等長時間のスポーツでは脂肪がエネルギー源の中心となりますが、摂取量が多くなればなるほど、筋肉中の細い血管内壁に脂がべっとりとつき血流を悪くし、持久力を低下させてしまいます。
ここでも、効率よくエネルギーに変えるのにビタミンが必要になります。

<ポイント>
・ エネルギー補給には炭水化物。白米に玄米、雑穀を混ぜると尚よいです。
・ 旬の魚介類や野菜と取り入れる→一番栄養価が高いものを効果的にとりいれることができます。


具体的に、運動前の栄養補給ですが、第一にエネルギー補給には炭水化物=糖質です。
運動開始の1〜2時間前でしたら果物やスポーツ飲料を採る事をお勧めします。
胃に負担をかけず、すぐにエネルギーになるからです。

しかし、運動直前では、糖質摂取を避けた方が好ましいです。
前に少し書きましたが、血糖の急激な上昇が起ると、インシュリンが大量に分泌されて、急に血糖値が下がるという=反応性低血糖を起こす場合があります。
こうなると、低血糖症状で脱力感等を生じ思うように運動できなくなる事があります。
特に砂糖のたっぷり入ったファンタグレープ(ファンタシリーズで一番砂糖の含有が多い)、菓子パン等は要注意です。

運動中は汗で失われる量に見合う水分を補給しないと脱水症状を引き起こしかねないので、喉が乾いてから飲むのではなく、喉の乾きを感じさせないうちにこまめに補給することが大切です。
外気温にも左右されますが、成人と違って小児は容易に脱水を起こします。
ミネラルウォーターや麦茶等で大丈夫ですが、90分以上続く練習では汗と一緒に塩分も喪失し、スタミナが続かなくなりますので、水分と合わせて糖質等の入った物をお勧めします。(果汁100%飲料、栄養補助食品、果物)

運動後は運動中に使ったエネルギーをできるだけ早く補充します。
筋肉内等の貯蔵エネルギーをグリコーゲンといいますが、運動後早期の糖質補給はそのグリコーゲンの合成を効率よく行ない、疲労回復が早くなります。
直後に糖質の入った飲み物を採り、早期に少なくとも4時間以内には糖質中心の食事を採ります。

知り合いのトライアスロン選手からの受け売りですが、このような方法もあります。
運動時のエネルギー源としてグリコーゲンが重要であり、その供給源が食品中の炭水化物です。
筋肉内のグリコーゲンの量は一度ゼロになるまで消費されると、その後に供給されたときは元よりも多く貯蔵できることがわかっています。
再びゼロになることに備えた人間の防御反応です。
これを利用した方法で、試合の一週間前より炭水化物の少ない食事を採りながら強い運動をし、筋肉内のグリコーゲンを一旦ゼロの状態にし、3日前になったら炭水化物中心の食事をするというものです。

成長期のお子様にとっての、身体を構成する栄養素、運動により失われる分の補給の重要性について少しでもお役に立てれば幸いです。